ファントム(19年雪組)

 音楽の天使は存在していた。それは決して、ガストン・ルルーが彼の著作の中に描いた空想の産物ではなかったのだ。…

 われわれ宝塚ファンは、「贔屓が出る公演は全てすばらしい」「贔屓が出る演目はすばらしいものでなければ許せない」という似て非なる2つの病を患っている。
 こんなことを書くのは、新参ファンの私でさえよく知っているように、『ファントム』という作品がトップコンビの望海風斗さんと真彩希帆さんにとって特別な演目であるからに他ならない。宝塚のたのしみは単なる観劇だけでなく演者たる生徒さんたちへの極めて個人的な感情によるところも大いにあるけれど、それを鑑みずにすばらしいと思えたこともどこかに書いておきたいと思い、拙文ながら千秋楽に捧げます。(なお個人的感情によるところの感想は、ツイッターで大いにわめきちらかしました。)

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“D”ramatic S! (17年雪組)

9月9日(土)18:00公演@相模女子大学グリーンホール

 「行くぜ神奈川!!!」(「来たぜ神奈川」だったかもしれない、興奮のあまり記憶が曖昧)

 幕開き、一人真ん中に立つ望海風斗。お芝居とは違う、明らかにこれから楽しいことが始まる高揚感に想像以上に期待が高まる。やっぱりショーが好きだ。ちなみに、お芝居の後はこの人はやっぱり芝居が巧い、ショースターというよりミュージカル俳優だ、と思っていた。両方見終わった今は望海風斗が生きていることに感謝、と思っている。

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琥珀色の雨にぬれて(17年雪組)

9月9日(土)18:00公演@相模女子大学グリーンホール

 私の好きな望海風斗はブロンソン・スミスである。
 蘭寿とむさんの退団公演『ラスト・タイクーン』において、ヒロインである蘭乃はなさんの恋人という敵役ポジションにいながらアル中DV自殺幇助等あまりのクズっぷりにライバルの土俵にも上がれなかった稀代の(?)悪役だ。宝塚には王子様が山のようにいるが、こんなクズ男は中々お目にかかれない。望海さんがトップになったあかつきには、ぜひとも今までになかったようなダーティヒーローをやって欲しい、相手役の真彩希帆さんは純粋な少女の役などが似合いそうだから、ジゴロと初心な市井の娘の話にしてくれなどと勝手に思っていた私は『琥珀色の雨にぬれて』の解説を読んで絶望した。「戦火を潜り抜けても純粋さを失わない貴族の青年クロードと、魔性の女シャロン」、なぜこんなにトップコンビの持ち味と違う作品をわざわざ引っ張りだしてきたのかと。

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